プロダクトの先へ

本当に欲しいもの

社内デザイナーの1人であり社長でもある土屋の前職は、生活小物やキッチン用品を中心に扱う雑貨店の経営者兼バイヤーでした。
国内外の問屋や展示会、産地を巡るなか、携帯する仕事道具や小物類に気に入ったものを見つけることが難しいと感じていました。

当時は実用性一辺倒のものや男性向きの無骨なもの、あるいは過度にファンシーなものやデコラティブなものが中心。
自分にとってしっくりする、使い勝手がよくデザインに優れたものが手に入らない。それは、ある種のストレスでした。

わだかまりの正体

折しもICカードが普及し、会社員の身分証がIDカードに変わりはじめた時期。地下鉄の車内で、ランチタイムのオフィス街で、青いナイロン紐と透明のビニールケースを首から下げて歩く人々を目にするようになりました。

ケースに入っているのは名前や所属が書かれた大切なもののはずなのに、なおざりでいいの?
せっかくおしゃれなスーツを着ているのに、そんなに素敵なバッグやネックレスを身につけているのに、“名札”はそれでいいの?
疑問とも違和感ともつかない思いが、頭の片隅にずっとありました。

機能を満たし、心を潤す

工芸系の大学で陶芸、織物、染織、デザイン、油絵、彫刻などを学び、“用の美”に惹かれていた土屋。

身のまわりのあらゆるものに、癒やしや和みや豊かさを感じていたい。自分が愛着を感じるものに囲まれていることは幸せのひとつだから、仕事で使う道具や小物もおろそかにしたくない…。
そんな思いが膨らみ、さらに元来のものづくりが好きな質も相まって、A.Y.Judieを創業。利便性とデザインを兼ね備えた小物類を自ら企画、製造し、販売を開始したのです。

原点を忘れない

とはいえ、製造業としてのノウハウはゼロ。
縫製が得意な知人を頼りに製造に励むかたわら、さまざまな展示会に足を運び、百貨店や人気雑貨店でのリサーチや営業を繰り返し、世の中の動向を知るために経済紙を貪るように読み…と試行錯誤の日々を過ごしました。

思うように業績が伸びず、「荒波に揉まれる小舟どころか、光が差さない深海の底を這いずり回っている状態」が続くなか、海外から商品を輸入したこともありましたが、自信を持って売れるレベルではなく、やむなく廃棄。これ以上ない苦い経験です。

七転八倒するなかで、「機能性とデザイン性の両立こそが、私たちの個性であり強み。愛着あるものを身につけることがモチベーションアップにつながると知っているからこそ、そこを妥協することはできない」と再認識し、使いやすく便利なツールというベースに、シンプルかつ印象的なデザインをプラスする独自性を追求しつづけてきたのです。

自分らしく、幸せに

ほんの十数年の物語を紡いだだけの小さな会社ではありますが、理念として掲げている大切な言葉があります。

Be colorful, Be happy!

A.Y.Judieのプロダクトを手にする人に輝いてほしい。持つ人の個性を際立たせ、それが幸せにつながるようなブランドでありたい、という願いを込めています。
ささやかでも、A.Y.Judieが快適さや喜びや前向きさや満ち足りた気持ち、豊かな時間を生み出すきっかけになれたなら、本当に幸せです。