立場逆転でわかった自惚れ
今から30数年前、30才になった頃の話です。
私は東京から長野に戻り、小売業に携わることになりました。嫁ぎ先の食料品店の横にある小さな土産店で一人で子育てをしながら、春から秋までだけの季節営業の土産店でしたので、気ままな店番でした。
その後仕事が面白くなった私は旧軽井沢に2番目の店を作り、その後は長野県内や群馬県、埼玉県に食器やインテイリア雑貨品を販売する店を増やしてきました。商品の仕入れが主な私の仕事でした。
商品を仕入れる事は向いていたようでとても楽しく、仕入れた商品により売行きも異なるので、とてもやりがいを感じました。そして仕入れ量が増えると多くの取引先が長野まで営業に来てくれるようにもなりました。わざわざ交通費をかけて商談するだけの価値が出てきたのでしょう。
すると私の態度もだんだん大きくなりました。「これだけ売れるのは私の目利きがあるからだ。私は仕入れのセンスがある」と自惚れ、来てくれた人に「パッとしない物ばかりで見た時間が無駄だった」などと言う始末です。
田舎で小さな店から始めて、自己流でそれなりにやってきた私は、変な自信を身につけ傲慢で嫌な人間になっていました。そしてそれに気づくこともなく周りに嫌な思いをかけていました。
50歳を前に私は雑貨店の仕事から離れました。物を企画制作しそれを小売店のバイヤーに紹介して買ってもらう立場になりました。
以前の私の逆の立場です。更に付け加えるならば、聞いたこともない会社で販売実績もない、アイデアだけで怪しいと思われてもしょうがない状況でした。
商談で製品について紹介する私に対してバイヤーさんはどなたも誠実に対応してくれました。客観的に評価して沢山の助言を貰えました。手厳しいコメントもありましたが、どれも言われて納得する内容ばかりでした。役割を忠実に果たしていて、会社の購買力を自分の実力だと言う方は一人もいらっしゃいませんでした。
私は指摘された部分を改善しまた提案します。その繰り返しに多くのバイヤーさんや店長さんは付き合ってくれました。そのお陰でカードケースやパスケースが世に出て、店舗で販売していただくことができました。
あのまま雑貨店のバイヤーを続けていたら、井の中の蛙で生意気な人間のままだったでしょう。立場が変わった時、そこで出逢った多くの人が教えてくれました。人への感謝もその頃から感じることが出来るようになりました。
真逆の立場になって初めて分かる数々のこと。
その中でもこのことは私にとり最大のギフトだったと思うのです。
今も自分を客観的な目で見るようにしないとなと思っています。学びは続きます。
最後までお読みいただきありがとうございました。